【前提】移調楽器とは?|移調譜の読み方を知る前に知っておきたいこと
オーケストラ楽器を用いた作曲において、必ず出てくるのが
トランペットやクラリネットなどの移調楽器です。
B♭管やE♭管、F管などと言われます。
譜面上では「(楽器名)in B♭」「in E♭」「in F」などと表記されます。
これは吹奏楽部や管弦楽部あるあるだと思うのですが、楽器始めたてのころに誰もが言われるであろうひとことがあります。

フルートのドとクラリネットのドは違う音だから、
ドじゃなくて「C(ツェー)」って言ってね。
「????」って感じですよね。
同じ「ド」でも違う音だというのです。
例えば、フルートの「ド」はピアノの「ド」と一緒ですが、クラリネットの「ド」は、ピアノの「シ♭」にあたる音になります。
そして、各楽器の譜面も同様に、それぞれの「調」に合わせて記譜されています。

オーケストラ楽器や吹奏楽楽器を扱った作曲をするにあたっては、これらの移調楽器の特性を理解しなければ、楽曲のクオリティを高めることはできません。
この記事では、この移調楽器を取り扱う上で重要となる、移調譜の読み方について解説していきます。
これを読むことにより、移調譜面を読む苦労の緩和や、もっとオーケストラ楽器を自身の楽曲で生かせるようになってもらえると嬉しいです。
移調譜の読み方のコツ:「記譜位置」「記譜音」「実音」に分けて考える
移調譜を理解するためには、まず、譜面上の音を3つの要素に分解して考えることをおススメします。
- 記譜位置(五線譜上の音符の高さ)
- 記譜音(その位置をどう読むか)
- 実音(実際に聞こえる音の高さ)

たとえばB♭トランペットの場合、 譜面上でCの位置に音符が書かれていても、
実際に鳴る音はB♭。
つまり「記譜位置:C」「記譜音:ド」「実音:B♭」という関係になります。

この関係を脳内で変換できるようにすることが、移調譜を読むうえで重要なポイントになります。
譜面を見たときに「このクラリネットのCは、実際にはB♭が鳴っているな」と自然に読めるようになると、オーケストレーションの理解が一気に深まります。
移調譜の読み方3パターン:記譜位置・記譜音・実音の組み合わせで考える
移調譜を読む方法には、大きく3つの考え方があります。
ポイントになるのは、どの組み合わせを捉えなおすかという点に着眼するとよいです。
- 移調楽器の実音で読む
- 組み合わせを変えず、変換して読む
- 記譜位置と記譜音の組み合わせを捉えなおして読む
移調譜の読み方①:移調楽器の実音で読む
1つ目の方法は、移調楽器の実音で譜面を読む方法です。
この読み方の場合、記譜位置と記譜音の関係性はそのままですが、記譜音と実音の関係性を捉えなおして読むことになります。
楽器奏者と同じ譜面の読み方をするため、各奏者とのコミュニケーションも取りやすい方法です。英語式〔C,D,E読み〕ではなくイタリア語式〔ドレミ読み〕でも意思疎通が円滑に進みます。
ただし、記譜音と実音のギャップが生まれるので、例えば記譜音の〔ド〕はそれぞれの楽器で何の実音〔C、B♭〕なのかを理解しておく必要があります。
また、スコアを読む際など、複数の種類の移調譜を読む場面では、和音やコードを捉えるのに時間がかかりやすいとも感じます。

移調譜の読み方②:実音に変換して読む

記譜位置、記譜音をC調を基準にして読み取ってから、それぞれの移調譜に変換して譜面を読む方法です。
ピアノ譜などのC調を基準とした譜面を読み慣れている方や、音楽経験が無い方などが初めて移調譜を読むときには、自然とこの方法を取ることになると思います。
記譜位置・記譜音・実音の認識をいずれも変える必要が無いため、まだ移調譜を読むことに慣れていない方は、まずこの方法から入るとよいでしょう。
読むのには時間がかかりますが、移調譜の仕組み、性質を理解する基礎を学びながら、読むスピードを上げていくためには効果的な手法と言えます。
移調譜の読み方③:記譜位置をずらして読む
記譜位置の認識を、移調譜に合わせて柔軟に読み替える方法です。

たとえば、in B♭の移調譜の場合は、ドの位置にある音を、シ♭と読むということです。
この方法の最も良い点は、記譜音と実音を一致させたまま読むことができる点にあります。
実音の認識を変える必要がないので、スコアの読み込みなど、異なる移調譜間の和音や同一音を読み取る場面でも、素早く読むことができるようになります。
また、作曲の過程でDAWを使う場合は、基本C調の記譜音と実音の認識で作業をしていくことになるので、この読み方であれば、スコアからの採譜の際にも、記譜ミスが起こりにくく、かつ素早く作業しやすくなる効果があります。
一方で、普段の記譜位置と異なる読み方をする必要があるため、慣れるまで時間がかかります。
また、各移調譜の基本的なスケールを理解していないと、誤読することもありますので、徐々に慣れていくことが大事になります。
例えば、in B♭の譜面を読む場合 in Cでいう〔ド〕の位置の実音が〔シ♭〕ということになります。

このように、調号がついていなくても、実音に♭が入ってくる点には注意が必要です。
(とはいえ、総譜などの場合だと、一部の楽譜だけ調号が違うということは基本無いので、慣れてしまえばそこまで大きな影響はないかと思います)
どの読み方を使えばいいのか
どれが正解というわけではなく、ご自身が最も正確かつスムーズに読める方法であれば、どれを使っても差し支えないかと思います。
あるいは、目的に応じて使い分けることもよい方法かと思います。
例えば、移調楽器の奏者とコミュニケーションを取る場合など、同じ移調譜を使って他人とやり取りをする場面においては、読み方①の方がより円滑に意思疎通を図れます。
スコアを読むときなど、複数の移調譜を同時に扱う場面の場合には、読み方③を使うことで、パートごとの譜面の役割を把握しやすくなるでしょう。
まだ移調譜を読み慣れていない、楽譜を読むことが苦手な人は、読み方②から始めることをおすすめします。
ご自身の読みやすさや状況、目的に合わせて読み方を選んでもらうのが良いと思います。
移調譜を読む練習法
移調譜をスムーズに読めるようになる練習法ですが、まずは大前提として
移調譜やスコア(総譜)をとにかく読む
まずはこれを地道に続けることです。
譜面を読む時間を1分でも多くつくる。これ無しに読めるようになることは厳しいです。
逆に言えば、毎日30分でもいいので、譜面を読んでいると自然と読むスピードは上がります。
個人的な体感ですが、毎日30分~1時間程度読む時間をつくることを1ヶ月程度続けただけで、
譜読みの速度にかなりの変化を感じました。
スコアについては、オーケストラのスコアでもよいですし、吹奏楽のスコアもおススメです。
特に吹奏楽のスコアには、オーケストラのスコアではあまり出てこないE♭管の楽器がほぼ出てくるので、より幅広い移調譜読みの練習ができると思います。
E♭管の楽器は、主にアルトサックス、バリトンサックスなどが該当します。
また、この記事を読んでいる方の中には、作曲に関わっている方が多いと思いますので、譜面を読みながら、何かしらの楽器を演奏できるようになるとより良いと思います。
もちろん、各移調譜の楽器をそれぞれ一種類ずつ演奏できるようになれたら理想ですが、なかなかそこまで目指すのは難しいと思いますので、まずはピアノかギターで移調楽器の基本スケールを覚えるのがシンプルで効果的です。
移調譜を読むコツはないのか?
毎日譜面を読んでいくだけでも、自然と覚えていくことにはなりますが、特に最初の読み初めの時期でなかなか慣れないときには、先ほど伝えた「毎日でも楽譜を読む」「楽器を弾く」ことに取り組むことを前提に、ここからは移調譜を読むうえで、ここを意識したら読みやすくなったと感じたテクニック的なところを紹介していきます。
移調譜を読むコツ①:基準となる記譜位置の音を覚える
1つ目のコツは、覚えやすい記譜位置の音をまず先に覚えてしまうという方法です。
私の場合は、C調でいうところの、C〔第3間〕・F〔第5線〕・G〔第1線〕にある音がそれぞれの移調譜で何になるかを覚えました。
特に、C〔第3間〕の音を真っ先に覚えるのがおすすめです。C調の基準音でもあるので印象に残りやすいですし、「各移調譜のキー音は第3間にあたる」という法則があるので、非常に覚えやすいです。まずここを起点に覚えるのが良いかと思います。

移調譜を読むコツ②:各調の〔実音C〕の位置を覚える
2つ目のコツは、先ほどとは逆のアプローチで、各移調譜で〔実音C〕の位置がどこにあるかを覚える方法です。
移調譜を実音ベースの「ドレミファソラシド」で読みたい時に重宝します。
【移調の読み方①:移調楽器の実音で読む】パターンで慣れたいときは、まずはここを意識するとよいでしょう。

さいごに:移調譜は「言語の切り替え」に近い
いかがでしたか?
今回は、作曲家のための移調譜の読み方について紹介しました。
移調譜の理解は、さながら語学学習に近いもののように感じています。
人類が食した最古の果実のことを、英語では“apple”、日本語では“りんご”と呼びます。
調の中心である「ド」は、B♭管奏者にとっては〔B♭〕であり、F管奏者は〔F〕であるということです。

どの実音を調の中心と捉えるかによって、基準となる音は変わるということです。
これはいわゆる「階名」という概念です。
階名についてはまた別の機会に解説ができればと思っています。
この概念を理解することができれば、オーケストラ楽器も恐れずにあなたの楽曲に取り入れることができるようになります。
ぜひ少しずつ理解を深めていってください。


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