アートを経営する_vol.3「日本のホール・劇場」【アートマネジメント】

ART
David MarkによるPixabayからの画像

はじめに

「アートを経営するシリーズ」とは?

本コンテンツは、2016年から文化政策に携わってきた筆者が、実際に得てきた知識を筆者なりにまとめたものとなっています。

アートと社会がよりつながっていく時代を築くために、
得てきた知識をコンテンツとしてまとめるとともに
これを深めて、掘り下げていくことで、
社会におけるアートの可能性を追求していこう、という試みです。

どんな内容を掲載していくのか?

基本的には、

  • 法令や計画などといった総論に関すること
  • 学説や論文など学術的な内容に関すること
  • 実際の事例や、マーケティング、ファンドレイジングなど具体的な取り組みにかんすること

を想定しています。

つまり、筆者の琴線に触れた内容であればなんでも掲載していきます(笑)

なお、本コンテンツは各種参考資料を踏まえ、可能な限り精度の高い内容となるよう制作しておりますが、あくまでも、筆者個人の見解でまとめたものとなっておりますことを、あらかじめご了承ください。

本日のテーマ:日本のホール・劇場

今回は、以下の2点について紹介していきたいと思います。

  • 日本におけるホール・劇場空間はどのように変化してきたのか
  • どのような仕組みでプログラムが公演されてきたのか

空間づくりの変遷

大人数が入ることだけを求めた空間 ―――公会堂の時代

戦前(1910-20年代)に設立された公会堂は、

式典や公的催事、講演会などといった、集会のための使い方が主流でした。

天候に左右されず、多くの人が一同に集うことできる空間そのものに意味があったと言えるでしょう。

文化・芸術にも使用できる空間 ―――多目的ホールの時代

戦後(1960年代-70年代)、すなわち高度経済成長期以後、

劇場・ホールは、公立・民間問わず次々と建てられていくことになりました。

公立のホールは、式典や公的催事、集会としての使い方がまだ主流でしたが、

それでも、演劇やコンサートなどを鑑賞する機会が確実に増えてきたこともあり、
ただ大きいだけの空間ではなく、公演のための基本的な舞台設備の機能が備わるようになりました。

例えば…

  • 音響反射板
  • 緞帳、舞台幕
  • 基本的な舞台照明や吊るすためのバトン機能
多目的がゆえに、弊害も

多目的である以上、どのような公演にも対応できるような状態にしなければなりません。

その結果として、よく言えば万能、悪く言えば中途半端な機能にせざるを得ないといった側面もあります。

例えば、ジャンルによっても、ホールに求める機能は大きく変わってきます。

ジャンル別の機能音楽の場合・・・

  • 音の余韻が残る「残響時間」を大切にする
  • 幕類はなくてもできる。空間の設計でほぼすべて決まる

演劇の場合・・・

  • セリフが聞こえやすい「音の明瞭度」を大切にする
  • 演出のために、幕や照明機器、音響機器が必要

オペラ・ミュージカルの場合・・・

  • お芝居のための空間+演奏者の空間が必要

などなど

文化・芸術のための空間  ―――専用ホールの時代

多目的ホールができ、劇場・ホールで舞台芸術を鑑賞する需要が高まり始めたころ、
よりよい環境で、鑑賞を楽しめるように、
芸術作品のジャンルに合わせたホール・劇場が建てられるようになりました。

これが、専用ホールと呼ばれるものです。

専用ホールというくらいですので、各ジャンルに合わせてホール・劇場が設計されています。

そもそものホールの形状から大きく違います。

以下に、国内の主要な専用ホールを挙げていますので、ぜひ比較してみてください。

国内の主要なホール・劇場音楽ホール

演劇ホール

オペラ・ミュージカルホール

プログラムづくりの変遷

ホール・劇場の空間づくりの流れについてを、簡単に説明してきました。

空間づくりは分かったけど、じゃあ実際に行われる公演やプログラムって、どうやって決まってるんだ?

という疑問もあるかと思います。

色々と仕組みはあるのですが、ここでは大きく3つの種類に分けて説明したいと思います。

劇場・ホールで行われる公演は、以下のようなパターンに分けられることが多いです。

  • 場所を借りて公演する(主催者は場所を借りた団体)
  • 既にパッケージ化されたプログラムを持ってくる(主催者は劇場・ホール)
  • 劇場・ホールで自主制作し、実施する(主催者は劇場・ホール)

この3つです。

順番に紹介していきます。

場所を借りて公演する

これは、プロ・アマ問わず、団体が公演を打つ場所を選び、料金を払って借りることで、実際に公演を行うことをさします。

特に、公立の劇場やホールで多いパターンです。

なぜかというと、

公立の劇場やホールは、地方自治法に定められている

公の施設としての性質を持ち、

誰もが公平に利用できる権利があるからです。

このあたりは、また別の機会にまとめたいと思います。

パッケージ化されたプログラムを持ってくる

これは、劇団や楽団などの実演団体や、制作会社が企画・制作したプログラムを、

劇場やホールがパッケージとして購入し、公演してもらうという形式です。

現在でも、公立の劇場やホールで、比較的よく用いられている方法だと思います。

劇場・ホールで自主制作し、実施する

これは、劇場・ホールの職員が中心となって、

その劇場・ホールオリジナルの企画・事業を

制作して実施するという方法です。

ここで重要になってくるのは、特に公立の劇場・ホールでは、

誰に向けてどのような事業を制作していくのか

ということです。

この点は、

文化芸術基本法における「社会的な分野との有機的な連携」という点と

非常に密接に関係してくる内容です。

 

詳しくはこちらをご覧ください↓

 

まとめ

  • 日本の公共ホールと呼ばれるものは、公会堂⇒多目的ホール⇒専用ホール・劇場と、時代の変化に合わせて、空間づくりが変化していった
  • 空間づくりの変化に合わせて、ホール・劇場で行う公演・プログラムのつくり方も変化していった。

いかがでしたか?

公共ホールと呼ばれるものが、これまでどのように変化してきたのか、その一端に触れてもらえたかなと思っています。

じゃあ、現在の公共ホールに求められていることは何なのか?

これはまた別の機会でお届けできたらと思っています。

今回は、これで以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事を読んだあなたの人生が、
少しでも豊かになりますように。

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